再生可能エネルギーと系統安定(2017年10月5日発表)

電気はためることができないので、必要な時に必要な分を発電する必要がある。

電圧は水圧と同じような概念で、ゴム風船のような入れ物があり、
水が入っていく口と、出ていく口があるとします。

ゴム風船を一定の大きさに保つために中の水圧(電圧)を一定に保とうとすると、
出ていく水(使用する電気の量)と
入ってくる水(発電する電気の量)を同じにする必要があります。

これが一般的に言われる同時同量です。

これを守らなければ系統破綻、大規模停電ということになるので、
これまで発電事業者は最大需要に対応できる設備を維持してきました。
また、電源の特性に応じて占める割合や稼働方法を決めてきました。

簡単に言うと、一定出力運転が得意な原子力発電を一定割合常時稼働させ、
急に電気が必要になった場合は出力変動(追い炊き)できる火力発電で対応する
そういったイメージです。

もともと温暖化を防ぐため温暖化ガスの排出を抑制しないといけないという理由で
石炭火力などを減らし、一定割合を原子力発電で賄うという算段でした。
ところが東日本大震災での原発事故が発生、一旦はすべての原発が止まりました。

そうなると電気が足りなくなりますので、
温暖化ガスの排出が多い火力発電を多く稼働させる必要があります。
産業を停滞させるわけにはいきませんし、
人々の生活を不自由なものにするわけにもいきませんので、
温暖化ガスの排出が増えるのは覚悟で石炭火力を炊き増ししてきました。

その後2012年7月にFIT=再生可能エネルギー全量買取法案が施行されました。
施行後、太陽光発電を中心に再エネが増えています。

基本的に再エネは温暖化ガスを排出しません。
再エネ比率が増えると温暖化ガスの排出は減少しますが、
同時に問題も発生します。

系統(電圧)の不安定化です。

再エネ(太陽光発電・風力発電)は変動電源と言われます。
太陽光発電は日射ある間は発電しますが、曇りになると出力が低下しますし、
夜になると発電しません。

風力発電はゆる夜は関係ないのですが、風がある時だけ発電し
風が止まると発電しなくなります。

そうなると供給される電力と使用される電力の量が一致せず
同時同量が達成できなくなります。

ゴム風船に水が入ってこないのにどんどん水を使うと、
ゴム風船は縮んでいきます。
すなわち水圧の低下=電圧低下が起こります。
これが行き過ぎると大規模停電になります。

ですので再エネを増やすこと=系統安定化が難しくなるということになります。

その解決策として、発電した電気を一旦溜めて、必要な時に使用(放電)する方法が模索されています。
いちばん身近なものが蓄電池です。
その他最近の研究では余った電気で水を電気分解し水素を発生させ、都市ガスと混ぜて使ったり、
燃料電池で再び電気に戻すことも可能です。

もう少し大規模な方法として揚水発電というものがあります。

簡単に言うと、電気があまっている時間にポンプを使って水をくみ上げ、
電気が必要な時間に水を放流することで水車を回し発電するというものです。
模式図では夜間に組み上げとなっていますが、
これは従来、消費電力の少ない夜間に水をくみ上げ、
消費電力の多い昼間に発電をするという概念を表しています。

最近では太陽光発電や風力発電が需要を上回って発電するときに水をくみ上げ、
需要が多くなってきたときに放水して発電するということになります。

これを実現するプロジェクトがドイツで行われています。
場所はシュトゥットガルトとニュルンベルグの間にあるガイルドルフという市です。
場所はこちら→https://goo.gl/maps/KZgriKGCqD72
Naturstromspeicher=ナチュラル蓄電 とでも訳すのでしょうか?

プロジェクトのパンフレットはこちら

川から引き込んだ水で大きなため池を作ります。
風力発電(風車)が4機あり発電を行いますが、
電力需要が少ないときは、発電された電気を使ってポンプを動かします。
ため池の水を風車支柱内とその周りに設置されたタンクにためます。
そして電気が足りなくなったときに放水して発電を行います。

ホームページの発電内容を考察してみました。
・風車 3.4MWが4基 発電量は1年間に42000MWh すなわち1日にすると115MWh

・水力発電 16MWh 落差169M 流量約10㎥/秒 揚水容量160,000㎥
      満水での発電可能時間約4時間30分 発電量70MWh

揚水発電は一般的に効率が70%と言われますので、
満水まで水をあげるのに約100MWh必要ということになります。
上記スペックに照らし合わせると風車での発電量、ほぼ1日分となります。

荒っぽい考え方ですが、これだけの容量があれば
かなりの出力調整が可能になるのではないでしょうか?
こちらがパリにあるヨーロッパの電力取引所の1日の価格変化です。
・ヨーロッパ電力取引所 EPEXのホームページはこちら
http://www.epexspot.com/en/

単純に考えると、取引価格の高い時間帯は電力が不足しています。
逆に取引価格の低い時間帯は電力があまっています。

Naturstromspeicherプロジェクトなら、1日の中でも電力取引価格が高い時間帯に売電し、
低い時間帯には系統に電気を流さず、ポンプを動かして揚水することが可能です。
これは作り出した電気を高く売るということだけでなく、
電力が足りないときに供給し、あまっているときには揚水という形で溜めていく
すなわち系統の安定化に寄与できるということになります。

コスト面やプロジェクトにあった地形が必要ということなど
問題がないわけではありませんが、
エネルギーを作り出し、それを安定的に供給するという一つの手段ではあると思います。
完成したら一度訪れてみたいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
太陽光投資ファンドに関するお問い合わせはこちら

関連記事

ページ上部へ戻る