託送料金の発電側課金について(2018年3月30日発表)

「託送料金の発電側課金」という言葉をご存じでしょうか。
文字どおりなのですが簡単に申し上げますと、
発電事業者も配電網に関するコストつまり託送料金(電線を使ってで電気を送る料金)
を支払うと言うことです。

これは再エネ発電事業者も含めての事です。
まあ普通に考えてみれば当たり前のことだと思いますよね。

これまでは小売電気事業者が託送料の全てを負担してきました。
小売電気事業者は最終的にはこの料金を電気料金に転嫁して請求しますので
実際のところは消費者が払っているということになっています。

ところがこの2年ほどの議論の末、
昨日電力・ガス取引等監視員会の「送配電網の維持・運用の負担のあり方検討ワーキンググループ」において
2020年から発電事業者側に託送料金の一部を負担させる
「発電側基本料金」を導入する方向で、大筋一致したようです。

これに関しては賛否両論ありますが、なぜこういう問題が議論されたのでしょう。

その背景について少し述べたいと思っています。
先にも述べた通り、送電網は東電や関電等の一般電気事業者が構築、維持しています。
この構築維持にかかる費用は電気料金に転嫁され、電気料金として徴収しているのは先ほど述べました。

ところが近年、太陽光発電が自宅や会社の屋根に設置され(全太陽光の約1/4)、
現在蓄電池も設置されてきており、これから益々その勢いは大きくなっていくと思われます。
つまり電気を自家消費する率がどんどん増えていっているということなのです。

となるとどのようになっていくか大体想像ができてきますよね。

自家消費率があがっていくと配電線を通る電気の量が減っていくという話になってきます。
託送料は従量課金による徴収が率として高いので、
太陽光自家消費は電気の従量課金部分が減っていくことにつながっていきます。
そうなると太陽光をつけている人とつけてない人の公平感が保てなくなってくるのです。

一方電力会社からすれば、送電網を維持するために係る費用はあまり変わらないので
託送料をもっと引きあげないといけないと言うことになります。
託送料を引きあげると益々料金を払っている側は太陽光発電をつける方向に行きます。
そうなると又託送料徴収が減ってくる。
と言う風に負のスパイラルが生じてきて最終的には送電網を維持するだけのコストを徴収できなくなって、
結果電力供給インフラを崩壊させてしまい電力供給不安が生じてしまうと言うことが予想されているのです。

欧米においては既にこのような現象が現実化しつつあると言われています。

日本においても送電網を維持するためには、減っていく需要家側にかけていくことに加えて、
これからも増えるであろう供給サイド
つまり発電所側にかけていかないと送電網を維持できないと言うことなのでしょう。

送電インフラは私たちの大切な資産です。
これを将来的にどのように維持していくかは我々が考えていかなければならないことだと思います。

気になるのは再エネ事業者も負担するこの託送コストはどれくらいの負担感なのかと言うことと、
支払う側の範囲がどこまでかと言うことです。

まず支払い対象についてまだ決定していませんが家庭につけている太陽光発電に関して初めは対象外でいきましょう。
と言う雰囲気です。
おそらく開始当初は10KW以上の太陽光発電所に対して課金する形になると思われます。
したがってファンド発電所に関しては十分対象になってくる可能性があると言うことです。

ただ、既存の発電施設に対してはそのコストを予め予定していたわけではないので、
相応の措置をはかる方向の意見が出ておりますが、どうなるかはこれからというところです。

スペインでは低圧の住宅用太陽光に対して8.9€/KWの負担になっているので、
1ユーロ120円としても1000円/KWになり、低圧50KWとして年間50000円程度なので、
インパクトは少なからずあるでしょう。

再エネを増やしていく事は社会のインフラを変えていく作業なので
どうしても既存設備との間で様々なコストがかかってきます。
それを如何に解決していくのか、人類の知恵が問われている部分ではないでしょうか。

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