日本と欧米における買取制度の思想の違い(2015年4月29日発表)

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日本の固定価格買取制度は基本的に全量を配電線(系統)に流して買取ってもらう仕組みである。
当たり前のことではあるが、
再生可能エネルギーで発電した電力をそのまま全部配電線(系統)に流すのだから、
すべての発電量がその対象になる。
この施設がたくさんできると当然系統はすぐに埋まってくるということなのである。
これが今の日本でおきている送配電線容量や変電所容量オーバーの問題である。
これを少しでも減らす方法はないのか。

すべてがすべてということではないが、この点欧米はどうなっているかというと、
例えば倉庫の屋上に設置したメガソーラーの発電電力は、
基本、その施設で消費されることになるということだ。
発電電力が余ったときはその分は電力会社で買い取ることになる。
これは日本でいう余剰買取制度と同じようにも思えるが、実はここからが少し違う。
 
倉庫施設のために消費した(自家消費)分については
実質全量買い取ってもらった時と同じような収益が得られるようになる。
発電したものは本来高い価格で買い取ってもらえ、使う電気は電力会社から安く買える。
自家消費した分は全量買取価格から、
電力会社からの購入額に相当する分を引いた差額が支払われる。


結果的に系統に流す電力の容量は減少し、
それだけより多くの再生エネを生み出すことにつながるということである。
要するに欧米ではできるだけ自家消費させることを念頭において制度設計がなされており、
ほんの3年程で配電線容量がパンパンになる貧弱な日本の構造とは
全然設計思想が違うということだ。
日本の現在の仕組みでは、電力会社に設置申請された発電容量を基に計算されており、
実際に稼働しているかどうかは勘案されていない。
例えば、設置申請された発電容量が、需要を超えたといわれる九州電力でも、
実際に稼働している発電所は申請の13%程度、最大需要に対しても15%に達しないのである。

しかしなぜ日本はこうなっていないのであろう。
考えてみると元々、再生可能エネルギーは分散型のエネルギーとして
すぐ近くで消費できるということが一つの大きなメリットのはずだ。
そうだとするならまず自家消費した上で余剰分を系統に流し、
自家消費分も含めて買取の対象にするということは非常に合理的であると思える。

再エネ発電した電力をいくら消費したかを把握すること自体は
現在の日本の電力会社の技術からしてそんなに難しいことではないと思うのだが。

もちろんメガソーラーは野立て(※1)のものが多く、自家消費できない施設が多いが、
施設に付随した発電所もたくさん存在する。
(※1 地面に設置されているもの)

もっともっと自家消費を促すような制度設計にすることによって
再エネ推進の拡大を図るべきであると思う。
北米のネットメータリング(州によって少しずつ違うが)もその一例といえよう。
ネットメータリング(余剰買取システム)に関しては、
設置者のメリットという面から議論のある部分なので、
また機会があればここで紹介したいと思う。

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