発電事業者(高圧以上)からの視点での考察

我々を取り巻く日本の電力業界は電力自由化と再エネ大量導入という二つの大きな課題を同時に遂行していこうという大変大きな転換点を迎えており、新たな電力政策が次から次へと打ち出されています。少し油断していると変化の波にのまれていくような状況にあるという事を感じておられる方が多数派ではないでしょうか。今回は今後の再エネに関する制度変更や需要家の動向を前提に再エネ発電事業者の視点で考えた場合にどのようなリスクが存在するのか、又その各リスクからどのような方策が考えられるのかをまとめてみました。2022年4月から始まるFIP制度や今後更に広まっていくであろうコーポレートPPA、そして自己託送の対象範囲の拡大等について、発電事業者の視点で考察を述べてみたいと思います。

<インバランスリスクについて>

FIPにせよPPAにせよ、FITと大きく異なるのは発電量予測とインバランス負担が発電事業者に課されることです。これには一定のコストが発生しますが、FIPについてはインバランスコストという名目で実質的にプレミアムに上乗せされます。PPAにおいては、当該コストは需要家への売電価格に内包されたものになります。

<与信リスク>

FIT、FIPにおいて、与信リスクは存在しませんが、PPAについては需要家毎に与信リスクが異なってきます。これを売電価格に反映できるかは需要家との交渉次第ですが、長期の与信リスクを正確に見積もることは相当困難であるため現実的には難しいのではないでしょうか。ただし、PPAの場合、他の需要家やJEPXおよび小売電気事業者等への供給先振替は適宜可能なため、その際のコストは発生するものの実質的な与信リスクはある程度減じられたものになると考えられます。更にFIPを組み合わせておけば、振替時にもプレミアムを受け取ることが可能ですのでリスク低減効果に与する手段と言えるのではないでしょうか。

<収益変動リスク>

FIPについてはFITに比べて収益変動が大きくなることは免れません(上振れの可能性もあり)。PPAについては、需要家との契約次第となりますが長期・固定価格での契約となることが一般的であると想定されますのでFITに近いと考えられます。

<需給一致(30分同時同量)>

FIT・FIPには存在しませんが、フィジカルPPAおよび自己託送においては制約事項となります。特に需要家の休業日や景気変動の影響等による電力需要低下時に発生する余剰電力をどのように取り扱うかは課題になりそうです。また、バーチャルPPAについても四半期ごとに非化石証書の受渡しを行うので、その面では緩やかな制約が存在しているとも言えそうです(当該四半期の発電量が電力需要を上回る場合、発電事業者がそのリスクを負担する可能性がある)。なお、直近の審議会から、非FIT非化石証書についても新設電源に限り需要家が直接購入できる方向で整理される模様です。なお、これもPPAにFIPを組み合わせておけば、余剰電力が発生する場合にも、市場もしくは小売電気事業者への売電収入に加えてプレミアムを受け取れますので一定のリスク抑制効果が期待できます。

<契約交渉・締結>

FIT・FIPは確立された手順を踏めば発電所を運開できるのに対し、PPAは需要家との交渉により基本的に個別契約となるのでやはり追加コストを要することは否めません。

以上のことを簡単に以下の表に纏めておきます。

 

インバランスリスク

与信リスク

収益変動リスク

需給一致

契約交渉・締結

FIT

なし

なし

不要

確立手順

FIP

あり

なし

不要

確立手順

V-PPA(FIP)

あり

あり

不要

個別交渉

P-PPA(FIP)

あり

あり

個別交渉 *1

自己託送

あり

あり

*2

個別交渉 *1

*1:小売電気事業者との連系が不可欠 *2:常に需要電力>供給電力を維持

これらの比較から、発電事業者(特に太陽光)の視点から見た場合、やはりFITが一番有力な選択肢となり得るでしょう。但し、今後は制度面から、中・大規模出力の太陽光発電所はFIP発電所に集約されていく方向です。一方で需要家から今後追加性のある非FIT電源への需要の高まりや市場高騰の影響により、新設電源については低廉化が進むFIT買取価格に比べその他の売電方法(上記表FIP以下)が収益面で有利となる可能性が大きいのではないでしょうか。上述の通り、PPAの場合には与信リスクや30分同時同量(フィジカルの場合)に保険的な意味からFIPを組み合わせることは有力な手段と我々は考えています。

ただ、ここでFIP電源における追加性の有無の判断が問題になります。

ゼックパワーでは、需要家と発電事業者が予めPPA契約を締結しその手段としてFIP電源を活用することは追加性があるとの見解に立っています(既に運開されたFIP電源でPPA契約を新たに締結するのは追加性なし)が、最終的な判断は需要家の考え方次第になるのではないでしょうか。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
太陽光投資ファンドに関するお問い合わせはこちら

関連記事

ページ上部へ戻る