3年ほど前は「太陽光発電はメンテナンスフリー」と言われていました。
今は様々な会社が「O&M(オペレーション&メンテナンス)が重要」と言っています。
さて、何が変わったのでしょうか?
まず、メンテナンスフリーといわれた原因ですが・・・
例えば同じ発電所でも火力発電所と比べてみると、
火力発電所は石炭なりLNGなりを燃やしてタービンを回し、
発電機を回して発電しています。
常に燃料を供給し、安定して燃やす必要がありますし、
タービンや発電機など、可動部分のメンテナンスは欠かすことができません。
それに比べて太陽光発電所は極端に稼働する部分が少ないです。
唯一あるのがPCS、パネルで発生した直流電流を交流に変換する
パワーコンディショナーという装置です。
そのPCSも毎日メンテナンスをする必要もなく、
本体冷却のためについている換気口のフィルターを半年に一度掃除するくらいです。
他の機械設備と比べてメンテナンスを行うことが極端に少ないので、
メンテナンスフリーといわれたのだと思います。
ただ全くメンテナンスしなくていいわけではなく、
発電所を健全に保つために必要なメンテナンスはあります。
余談ですが、今「O&Mが重要」と言っているほとんどの会社は、
O&Mを請け負えれば、発電事業の続く20年近く安定収入が得れる、
そう考えて過剰なサービスを高い費用で提供するところが多い気がします。
そこで、発電所を健全に保つために本当に必要なメンテナンスというものを
考えてみたいと思います。
・下草の除去
当たり前の話ですが、パネルに影がかかると発電量が低下します。
パネルは10枚から20枚程度が直列に接続されていますので、
一枚のパネルに影がかかっただけで、多くのパネルの出力に影響します。
発電所の点検に回っていると、他社の発電所もよく見かけるのですが、
雑草が伸び放題という発電所も見かけます。
雑草対策は様々で、防草シートや砕石を敷き詰めるなどの方法もありますが、
いずれも恒久的なものではなく、後々厄介なことになったりします。
ZECでは草刈りと除草剤の散布で対応しています。
土壌は発電所によりさまざまで、すぐに雑草が繁茂するところと
あまり生えないところがあります。
それを見極め、年に2回から多いところだと5回草刈りを行います。
基本的にはまず春の雑草が生えた頃(5月頃)に草刈りを行い、
次に夏の雑草が生えた時点(梅雨明け)で草刈りを行います。
その次が秋の雑草、これは9月頃、
雑草の生えやすい土壌だと11月頃もう一度草刈りを行います。
これまではある程度雑草が生えた時点で場内一斉に草刈りを行っていましたが、
今年から、技術スタッフが発電所を点検に行くたびに、
発電に影響のある部分=パネル前縁の草刈りを行うようにしています。
これにより、発電量低下が防げるのはもちろんですが、
草刈りの頻度を下げることで年間コストの削減にもつながります。
・パネル架台の傷や割れ、ねじの緩み等
パネルや架台の傷や割れに関しては、各発電所を月に2度程度巡回目視しています。
3年前に1号発電所が発電開始して以来、現在では約4メガワットの発電所が稼働中で、
約16,000枚のパネルがある計算になります。
この3年間にパネルが割れているのを発見したのは2枚ありました。
2枚ともパネル表面のガラスが割れていましたが、発電はしており、
すぐに交換しなくても発電量に影響はありませんでしたが、
いずれは発電量の低下を興しますので交換しました。
ねじの緩み関してもしっかりとした対策を講じています。
各発電所とも、建設時にしっかりと増し締めを行い、その際ボルトにマーキングを行います。
目視点検でマーキングがずれていればボルトが緩んでいるということになります。
この3年間ボルトの緩みはありませんでした。
・PCSの稼働状態
同一発電所ではPCS毎の出力は大体同じになります。
点検時に出力の低いPCSがあれば何か故障しているということになります。
・遠隔監視
実はこれが一番重要で、実際の発電所点検は月に2度程度ですが、
遠隔監視は毎日、1日3回~5回発電データをチェックします。
一番警戒しているのがPCSの故障です。
先ほども書きましたが、太陽光発電所で唯一といってよい可動部分がPCSで、
ごくたまに故障して止まります。
1号~5号はソラモニ3Gというシステムで遠隔監視しており、
発電量の数値はPCS9台を1つの監視システムで監視しています。
発電所には36台~63台のPCSがあり、PCSには同じ枚数のパネルが接続されています。
ですので、PCS1台が停止しても発見することが可能です。
言葉資するとむつかしいので、グラフをご覧ください。
このようにPCSが1台でも停止すると、他のグラフに比べて下がるので、
すぐに発見することが可能です。
PCSの停止は即発電量低下につながりますので、
早期発見~対応が肝心です。
この3年間、PCSの停止に関しては早ければ翌日、遅くとも3~5日で交換対応しています。
それ以外にも、このような例がありました。
しもつけ6号で実際にあったことなのですが、
2015年11月19日、突然1台のPCSに出力低下が起こりました。
昼間の時間で、何かの影がかかるような場所でもなく、
他のPCSは健全に発電しているのに、1台だけというのは故障が疑われます。
ただ、PCSはそれほど複雑な機器ではなく、
今までに起こった故障は完全に止まってしまうといったもので、
少し出力が落ちるというのは初めての事象でした。
しもつけ6号は発電所の保守をお願いしている保安主任の方が、
近隣にお住まいですので、すぐに見に行っていただくことができました。
その結果がこれです。
北側隣地に木が数本あり、そこからの落ち葉がパネルの上に積もっていました。
すぐに保安主任がブロアー(大きいドライヤーのようなものです。)で落ち葉を飛ばし、
発電量は元に戻りました。
もちろんこれは故障ではなく、いずれ風が吹いて落ち葉が飛べば発電量は回復したはずです。
細かく遠隔監視を行っていれば、様々なことがわかるという例でした。
・年次点検
ZECでは1年に1回、発電所の総点検を行います。
その中で一番重要なものがパネルの断線チェックです。
ソラメンテという検査機器を用い、すべてのパネルに断線がないかチェックします。
パネルはシリコンでできたセルを直列につないで作られているのですが、
そこにはんだ付けされた部分があります。
そういった部分が稀に断線し、出力が落ちることがあります。
パネルには60個のセルがあり、それぞれ20個ずつ直列につながっています。
ですので、1か所でも断線があると出力が約33%低下します。
パネルには出力保証というものがあり、20年間80%の出力が保証されています。
(実際にはもっと細かく、年ごとに決められているのですが。)
断線したパネルはこの保証制度により、無償で交換可能です。
太陽光発電所は多くのパネルにより構成されていますので、
その中で1枚断線しても大きな出力低下にはなりませんが、
20年間発電所を健全に保つために大切なことだと考えています。
太陽光発電所は決してメンテナンスフリーではありません。
太陽光発電所いかに出力をダウンさせないか?が重要な課題です。
しかし、そのためにいくらでもコストをかけてよいというものでもありません。
ZECではこのように過大なメンテナンスによりコストを増大させることなく、
必要最低限で充分なメンテナンスを行うことで、
発電所を常に健全に維持しています。