先月、東京電力など大手電力5社で電気代の値上げが発表されました。政府が昨年1月から電気・ガス価格激変緩和措置として支援してきた補助が今年5月には縮小され、その後終了する見込みです。そうすると電気代はさらに値上がりする可能性があります。昨年夏に発表された大手電力各社の決算によれば10社中8社で過去最高益を記録しており、さらなる値上げに対して疑問視する向きもあるようです。
値上げせざるを得ない理由として挙げられているのは、燃料価格の高騰と円安による輸入価格の上昇が続いていることです。要は石炭、石油、天然ガス(LNG)などの化石燃料価格の高騰が主因とされています。中でも特に二酸化炭素の排出量が他と比べて少ないLNGの需要が世界的に高く、脱炭素社会の実現へ向けた流れの中でガス田などへの開発・投資が減っていることから生産能力は増えず、需要増加に対応できていないとみられます。
一方で、2024年は原発再稼働が進む見通しです。大手電力の中では関西電力と九州電力が最も安いのですが、この2社は原発を稼働させています。東京電力と関西電力の電気料金を比較すると、関西電力の電気料金の方が約2割安いことがわかります。政府は、審査に合格した原発17基全てを動かした場合、海外から調達するLNGのおよそ1.6兆円分を節約できるとしています。しかし、原発の発電コストが安いということ自体がそもそも正確ではなく、事故が発生する場合の経済社会損失は数十兆円規模以上にのぼるとの見方もあり、使用済み核燃料の最終処分費用なども過小評価されているとの指摘があります。
東京電力管内では、柏崎刈羽原発が再稼働される可能性が取り沙汰されています。柏崎刈羽原発は7基の原子炉を有し総出力は世界最大級ですが、これまでにも安全性の確保にまつわる課題が浮き彫りになるなど、2024年に再稼働する可能性が出てきているのは2基に過ぎません。首都圏の莫大な電力需要の中で原発2基分だけでは、値下げ効果はあまり見込めないだろうと思われます。
これらの動きは、エネルギー政策と原発再稼働をめぐる問題に対する世論にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。
図:筆者作成(Microsoft Designer(AI)を用いて生成したイメージ)