改めてFITについて解説する。
2012年7月にFIT(固定価格買取制度)が開始した。
FITは 再生可能エネルギ―電力を一定期間にわたり
固定価格で買い取る事を一般電気事業者に義務付ける制度である。
考えてみればこのFIT制度は資本主義社会ではありえない制度だと言ってもいい。
例えばパン製造工場をこれからつくって事業を行っていく事を考えてみよう。
パン製造工場を建設するにあたっては多額の建設費が発生し、
手持ちの資金と銀行からの融資で行うことが通常である。
ここで不安が出てくる。
パンを買ってくれる人はいるだろうか、初めは買ってくれても、
半年後はパンに飽きて買ってくれないのではないか。
パンの販売価格を150円と決めたければ、
それでは高くて買えないと拒否されてしまうのではないだろうか。
そういう事になれば従業員に給料も払えなくなるのでは、
銀行に融資金を返済できず会社も倒産してしまうのではないか。
という心配を普通はいだくものである。
しかしこのFITというものはそのような心配は一切ない。
つまり20年間にわたって電気の買取価格40円(当初価格)という固定価格で
一日の休みもなく必ず買い取ってくれるのです。
更に言えば初めの初期投資価格を一定の償却年数まで考えてくれていて、
そこに6%の利益まで乗せてくれて買取価格が決まるのである。
まるで電力会社の総括原価方式を地でいくような制度である。
おそらくこのような制度は今後なされることはないであろう。
と言うほど貴重な制度である。
原資になっているのは国民のお金であるがそれは少し置いておくとして。
ここまで手厚い保護政策をこの再エネ分野に落とし込むのも、やはり全世界が地球温暖化
危機回避を最重要な事業と受け止めている証拠であろうと思うのです。
しかし皆さん、この制度はこれからずっと続いていくのでしょうか。それは続きません。
それは再エネが独り立ちするまでの過渡的な制度なのです。
つまり再エネ設備がこの制度を用いて大きく普及がすすみ、
設備価格が低下して発電コストが既存の石炭、
ガス火力や原子力と肩を並べるくらいまでの発電コストになる事を期待しているのです。
特に太陽光や風力はその燃料費がかかりません。
又その燃料は無限にこの地球に存在するのです。
そんなクリーンなエネルギ―をつくりだすことができればどれほど素晴らしいものか。
それを願って作った制度ですので、従っていつかこの制度は終わるのです。
言うまでもなく買取価格は下がっていっています。
がしかし先ほど少しふれたように国民の負担(再エネ賦課金)は増えていっています。
この負担を如何にやわらげて行くのか制度の見直しが現在着々と進んでいっているみたいです。
本年6月にドイツに行ってきました。
このブログでも何度か触れているようにドイツはFIT開始後17年程度経過しています。
ドイツは既に2014年からFIT制度に市場原理を用いて
FIP(フィードインプレミアム)制度を導入しています。
ここでは発電事業者は電力の売り先をこれまでの電力会社ではなく、
自分で探してくる事が必要になってきます。
又買取価格が電力の市場価格に連動する形になり、
FITのように確定的な利益を見通しにくい状況になっています。
FIT制度もどんどん市場の波にさらされてくると言うことなのです。
逆に言えばそのように制度が変更されていくという事は裏返せば再エネが独り立ちして、
再エネ単体として経済的価値を持つに至ると言うことではないでしょうか。
FIP制度は非常に分かりずらい制度であり、ここで細かい説明はいたしませんが、
資源エネルギー庁の「再エネの大量導入時代における政策課題に関する研究会」のリリースからは
「FIP制度」や市場に対する「直接販売」という表現があるところをみると
日本もその方向に行くんだなと感じさせる今日この頃です。