FIT or FIP どっち?

昨夏、簡単にFITからFIPに移行する意味について触れましたが、FIT発電所にとって収益性が劣る環境にわざわざ移行する動機は持ちえないでしょう。そこで今回はFITからFIPに移行すべき発電所とはどのような発電所であるのか考察してみたいと思います。

なお、FIP制度の詳細設計についてはまだ議論中でありますので、現在審議会で進められている内容をもとに話を進めさせていただきます。少々小難しいかもしれませんがどうぞお付き合いください。

以下の図の通り、FIT制度は電力市場の価格にかかわらず発電電力の全量を固定価格で買い取ってもらえる非常に有難い制度ですが、FIP制度は発電事業者が電力を自ら電力市場で売却しこれに一定額の補助金を支給しましょうという制度です。

経産省資料より抜粋しゼック追記   

ここでは単純化するため当該発電所は各時間帯(コマ)に1kWhの電力を生み出しこれを市場で売電することと仮定します。すると、上図からFIP発電所の収入は以下のように求められます。

 ① FIP発電所の収入  =  総発電量×プレミアム※1電力市場での売電収入※2
 (FIP制度全体の面積)    (オレンジの網掛面積)    (白地の面積)

※1 プレミアム = 基準価格(FIP価格)市場平均価格
※2 電力市場での売電収入 = 各コマ発電量 × 市場価格

             = 総発電量 × 当該発電所の平均市場売電単価

※1、※2を代入すると以下に変換されます。

 ② FIP発電所の収入総発電量 ×(基準価格市場平均価格
             + 総発電量 × 当該発電所の平均市場売電単価

ここで、FITからFIPに移行する場合の基準価格は以下になる見込みです。

  基準価格(FIP価格)= FIT価格 + リスク負担に対するボーナス(1円/kWh:変動電源の場合)

※実際には、上式から非化石価値がマイナスされる見込みですが非FIT非化石証書市場で売却すれば相殺されるのでここでは考慮しません。

これを②に更に代入すると、

FIP発電所の収入 = 総発電量×(基準価格市場平均価格
          + 総発電量×当該発電所の平均市場売電単価

        総発電量×FIT価格 + 総発電量(リスクボーナス)- 総発電量×市場平均価格
          +総発電量×当該発電所の平均市場売電単価

        = 総発電量×FIT価格総発電量(リスクボーナス)
          + 総発電量 ×(当該発電所の平均市場売電単価-市場平均価格)

となります。

FIP発電所は30分毎の発電計画を提出し、その計画通りの発電を行わなければなりません。しかし、太陽光や風力といった変動電源は発電量予測が難しいため必ず計画値との乖離が生じます。この乖離分に対しペナルティとして課される金額をインバランス料金と言います。従って、最終的なFIP発電所の収益は以下になります。

FIP発電所の収益 = 総発電量×FIT価格総発電量(リスクボーナス)
         + 総発電量 ×(当該発電所の平均市場売電単価-市場平均価格)インバランス料金

これを項別に見ると、①FIT収入に等しく、②発電容量・設備利用率に比例し、③平均的な発電所に比べ市場価格の高いときに発電量が多い発電所が望ましく、④発電予測を精緻化しインバランス料金を極小化すべき、と読み取ることが出来ます。

FIPに移行すべきか否かは②、③、④についてトータルでプラスの収益になることが条件となります。

②は発電容量が大きく稼働率が高いほど得る追加収入も増えますが、太陽光や風力発電は発電量予測が難しくインバランス発生時のリスクも増えることになりますので、④のリスクを回避するため②を原資にアグリゲータにリスク移転することも検討すべきでしょう。

③については、具体的には夏冬および朝夕にように電力市場価格の高騰しやすい時期・時間帯により多く発電する発電所が有利となりますが、所有発電所について過去の発電データを用いた収益シミュレーションを入念に行い、所有発電所の発電特性を把握する必要があります。

実際には、これら以外に新たなコスト要因、非化石価値の取り扱い、売電先(市場ではなく小売電気事業者に相対で売電する等)、も考慮したうえでFIPへの移行を検討することになると思われます。

やや込み入った内容となってしまいましたが、FITからFIPへ移行を検討する場合の必要な要件についておおよそのイメージを持って頂けたら幸いです。

最後に上記FIP収益シミュレーションはゼックにて承ることが可能ですので何なりとお問い合わせください。

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