今月に入り、欧州で脱炭素化の実現に向けたエネルギー源について、新たな動きがありました。
EUの欧州委員会は今月初旬、原子力発電は脱炭素社会の実現に向けて地球温暖化対策に役立つエネルギー源であると位置づける決定をしました。既に脱原発を進めてきているドイツから反対意見が出され、EU内の溝が深まる懸念もある中で、電力の安定供給と温室効果ガスの排出抑制を両立するため過渡期の現実的な選択肢であるとしました。EUタクソノミー(分類)に一定の条件下で原発と天然ガス発電が追加され、民間の投資を呼び込みやすくする効果が期待されるそうです。
一方で、日本はアンモニア混焼やIGCC(石炭ガス化複合発電)、CCS(二酸化炭素回収・貯留)などを重要な排出量削減対策にあげて推進しています。しかし、これらは国際エネルギー機関(IEA)の2030年のネットゼロ排出シナリオ(NZE)に比べて炭素強度が高い(CCSを除く)とみなされています。あるイギリスの研究機関のレポートによると、二酸化炭素の排出削減効果はわずかであり、再生可能エネルギーよりもコストが高いため脱炭素化に向けた解決策としては適切でないとしました。同レポートでは、太陽光発電と陸上風力発電などの再生可能エネルギーは、日本がカーボンニュートラル目標を達成するためのコスト競争力のある方法になるとも指摘しています。
各方面でカーボンニュートラルの目標達成に向けた努力がなされていますが、実際どのようなエネルギー源を使うのか、最終的には各国の判断に委ねられます。その中で私たちは原子力発電の再稼働問題や、アンモニア混焼、CCSなどの新しい技術に対し、どのように向き合っていくべきなのでしょうか。