日本の電気自動車に対する意識(2017年9月14日発表)

昨年、6月にドイツに行った時の話です。

ある企業経営者の案内でその会社のもつ自家消費向け太陽光発電所を
案内していただいていた時の事であります。
その方の車で案内をするということでしたが車は日産のリーフでした。

「日本の電気自動車なんですね。」とお声掛けすると、
「そうです。日本人はこんないい車が国産車としてあるのに
なぜ電気自動車の割合がもっと増えないんですか。」
という事を言っておられました。

少しばかり恥ずかしい思いをした事を覚えています。
電気自動車に対する感覚がやはり日本とドイツでは全然違うのだなと思いました。

「日本では走行距離が短いのでなかなか使いづらい」とか
「充電ステーションが少ないので不便」という声が聞こえてきそうですが、
ドイツでは「環境にやさしいので乗っていて気持ちいい」とか
「バッテリーが発電所の役割も担えてすごくいい。」といった事を聞きました。

バッテリーが発電所の役割????

その時は何の事を言っているのか理解できなかったのですが、
今になってみればよくわかります。

先日、お話をさせていただいたVPP(バーチャルパワープラント)という概念を思い出してください。
おさらいしますと太陽光発電所、風力発電所、水力発電所等の再エネ施設や
火力発電所等の発電施設、又工場や家庭における蓄電池そして、
そして電力会社の指示によって電力の節約に応じる需要家施設を束ねて
一つの発電所とみなすという事でした。

つまり、電気自動車のバッテリーも電力を系統に流せるということになれば
一つの発電所ということになるわけですね。

車を購入するという時点でそのバッテリーが発電所としての機能を持っている
という認識があると言う事に非常に感銘を受けた次第です。

でも日本ではなかなかこういう思考になりにくいですね。
それはなぜでしょう。

先日、ネット検索していて少し疑問が解消しました。
京大の内藤克彦教授が電気自動車と電力系統について見解を述べておられた文章がありました。

その文章は2010年ごろに三菱自工のアイミーブと日産のリーフが
世界に先駆けて電気自動車の販売を開始した。というところから始まります。

当然のことながら両社の開発担当者はエネルギ―端末(発電所)としての
別次元の自動車の将来を予見して電力系統、家庭内配線との接続による
新たな自動車搭載電池の利用システムの構築に取り組んでいたとの事です。

将来的に日本国内の7000万台の自動車が平均して30KWhの蓄電容量を備えていると仮定した時に
2100GWhの膨大な蓄電容量となるとのことです。

自動車は実際に走行している時間は短く10%程度で、
あとの90%は動いていないという特性から考えると
十分に電力を供給するアイテムとして使えるわけです。

ところがこの方向性は某業界の高い障壁の前に敢え無く頓挫したとのことです。

結局、EVの電力は冷蔵庫等の家電製品と同じ「負荷」としてしか認められなかったとのことです。
当初新しいシステムを作るために取り組んでいた自動車各社のEV電力グリッド連系システムチームは、
結局日本では縮小・解散ということになったそうです。

一方世界は、日本から提起されたEV電力グリッド連系システムの新たなビジネスモデルに注目し、
世界的なイノベーションを次々に起こしてきています。

ヨーロッパにおいては、EVは自動車の化石燃料からの脱却を切り札として
再エネの調整力として電力グリッドに組み込む事を既定路線として着実に進んでいる。
英国、フランス、中国までもが化石燃料自動車から撤退する事が最近報道されましたが
益々EVの将来を予見できる現象であると言えるのではないでしょうか。

先行していたはずの日本ではEV本体では他社と横並びに追いつかれ、
EVグリッド連系システムに関しては完全に世界に後れを取っている状態だと言うのです。
しかし日本は方向性さえ定まれば優れた技術があるという事は誰も疑う余地はありません。
電気自動車を自動車としての役割で終わらせるのはあまりにももったいない話ではないでしょうか。
まだ間に合うはずです。イノベーションを日本に。

紹介コラム
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/occasionalpapers/occasionalpapersno42

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