電力小売り自由化から2年、進捗状況はどうなのか(2018年4月20日発表)

2016年4月より、電力小売りの自由化が本格的に始まってはや2年がたちました。

その後、どのような状況なのかを少し見てみたいと思います。

 

目に見える大きな現象としてはやはり電力小売自由化で一般の電力消費者、つまり私たち個人のレベルで電力会社を自由に選べるようになった事でしょう。

2018年1月時点でのデータを見てみると大手電力会社から新電力と言われる新たな電力小売り会社に切り換えた件数ベースの割合は低圧分野(一般家庭レベル)では8.2%となっています。現在ではおそらく10%に達しているのではないでしょうか。(大手電力会社の自由化メニューへの切り替え除く)

 

この割合を低いと見るか高いとみるかは人によって違うと思うのですが、電力自由化が日本より15年以上先に進んでいるヨーロッパが現在10%前後であると言う事を考えるとかなり速いペースで進んでいるのかなと評価できるかもしれません。

ただ、今一スイッチングするメリットがあまり感じられないと思っている人が多いということも事実であり、又大手電力の巻き返し営業も活発になっていることから、ここからどれくらい伸びてくるのかは予想が難しいところです。

 

私が注目しているのは卸電力取引所(以下「JEPX」という)の取引量です。JEPXはこのブログでも少し触れたと思いますが、現在は一般電気事業者や電力小売り事業者が電気を調達したり売却したりと主にプロが利用する場になっていて、東京証券取引所みたいに一般の方が証券会社を通して取引できる場にはなっていません。

仕事として電力にたずさわっている方しか基本的に利用しないので、まだまだ一般への認知度が低く、取引量は諸外国に比べて相対的に少ないのが現状です。

JEPXは一言で言うと電気の需給調整の場と言うことが言えるのではないでしょうか。 。電力と言うものは貯蔵する事ができませんので、電力発電事業者、電力小売り業者には需給調整義務があるのです。需要と供給をマッチングさせるためにJEPXにてその過不足を取引し、調整していくのです。

従ってJEPXで決まる電力価格を前提に電力会社等は色々な戦略を決めていきますので、電力価格はその時々の需給状況を正しく反映している必要があります。つまり取引量がある一定大きくならないと正しい価格指標を形成しづらいと言うことになるのです。これは電力価格を競争の中で正しく維持する機能がある事、これが自由化にとって本当に意義のある事だと思うのです。

それではこの取引量、つまり約定総量はこの1年でどれくらいになっているのか、データをグラフ化してみました。下記ご参照ください。昨年4/1~今年の4月5日までのデータをドイツと日本で比較してみました。

これをみると一目瞭然ですがこの一年間でドイツ市場はほとんど伸びていませんが、日本市場の約定量は4~5倍になっています。ドイツ市場は成熟期にあり、なかなか取引量は増加していく過程にはありません。日本は元々が低かったと言えば返す言葉がないのですがこの一年で約定総量が一気に増えている事が見て取れます。

これは単に電力自由化をきっかけに小売会社が増えて取引が活発化したと言うことだけでは説明がつきません。この取引量を増やすために経済産業省が電力会社に対して一定の働きかけをした結果が大きく表れています。

同省はJEPXを活性化していくために各一般電気事業者に対して発電電力の少なくとも10%(今後は20%まで)を市場に出すように要請をしたり、エリアを結ぶ連系線を通る電力取引を市場で売買するように制度を作ったり(今年10月~)とあの手この手を使ってなんとかJEPXの約定総量を伸ばす努力をしているのです。

 

選べる電力会社が多くなって、その選択肢が増えたり、JEPXの約定総量が増えたりと電力自由化の成果が少しずつ形になって表れていていると言う事は喜ぶべきことだと思います。

ただ、最終的には電力を使う我々国民が電力自由化の恩典をどこまで享受できるかと言うことです。もっと安く、もっと便利に、もっと安全に電気を使えるようになってこそ電力自由化の意義があるのです。そこにたどり着くまでにはすべて国におんぶに抱っこではなく、自分で物事を考え、様々な試行錯誤を重ねながら電力にたずさわる者が国の制度を活用して、よりよいサービスを提供していく事が欠かせないと思っております。

株式会社ゼックは少なからずその役割を担っていけるような存在になりたいと思っております。又次回をご期待ください。

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