オリンピック開催を目前に控えるなか、東京都のコロナ感染者はリバウンドの兆候も見られ、どうにも落ち着かない日々が続いています。
電力業界においても、先日2021年度の電力需給の見通しが公表されましたが夏季・冬季いずれにおいても厳しい状況が見込まれており、残念なことにこちらも平常運転とはいかない情勢です。ただし、夏季については休止した火力発電所等の再稼働により、供給力の確保に目途が立ちつつあるようなので何とか冷房の効いた室内でオリンピック観戦できそうです。関係者の皆様の努力に感謝したいと思います。
しかし、冬季においては特に東京電力エリアで予備率がマイナスとなっており、必要な供給力の確保に向けて追加施策が実施されるようです。具体的には、発電所の定期点検時期をずらすとか、企業が保有する自家発電機の稼働要請や休止発電所の再稼働等が考えられているようです。
今年1月にも供給力不足により電力市場価格が高騰し、一般家庭においても電力会社との契約内容によっては電気代が10万円を超えるというような報道を目にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは発電燃料(LNG)の不足に起因した事象ですが、来冬はたとえ燃料が十分確保できていたとしても供給力が不足しかねない状況となっています。
例えるなら、今年1月はダムの水が少なく蛇口を捻っても水がチョロチョロとしか出てこなかったのに対し、次の冬はダムに水はたっぷりあるのに蛇口が少ないため十分な水量を行き渡らすことができず水の価値が高騰するといったイメージでしょうか。
それでは、なぜこうなったのか?ということなのですが、老朽火力発電所の休止に加え、冬季は夕方から夜間に電力需要のピークが来るため太陽光発電が当該時間帯の供給力としてあまり貢献できないという事情があります。
また、国は予め必要な電力の供給力を確保するため容量市場というものを昨年開設していますが、当該市場の成果は2024年度から反映されることになるので安心できるのはもう少し先になります。
電力市場価格の高騰は少なからず私たち需要家に対する電気料金に影響を与えますので、エコキュートやエネファームといった省エネ機器の更なる普及と効果的な運用を実現させるとともに電力需要期にはひとりひとりが節電を心がけるよう前もって啓発することが必要だと思います。