先週約1週間ドイツで研修を行いました。
VPP(仮想発電所)や地域エネルギー供給、パッシブハウス等について学んできましたが、
特に興味をもったのが電力の市場取引、需給調整です。
ドイツはすでにFIT(フィードインタリフ)からFIP(フィードインプレミアム)に移行しています。
簡単に言うとFITでは再エネ発電したすべての電力が自動的に買い取られますが、
FIPでは市場取引に委ねられます。
ただ買取価格が、安定しない市場価格に依存してしまうと
発電事業が安定した収益を見込めないため、
市場価格がFIT価格より低い部分をプレミアムとして補填します。
また、基準となる市場価格は月平均価格となりますので、
基準市場価格よりも高い時に電力を売れば、FIT価格よりも高い利益を上げることが可能になります。
そこで活躍しているのがVPPと呼ばれる業態です。
VPP=バーチャル・パワー・プラントを日本語にすると仮想発電所となりますが、
実際は複数の発電所を束ねたものです。
訪問したin.power社は再生可能エネルギーのみで
1300MWの発電所と契約をしており、そこで発電される電力を電力市場で販売しています。
何故電力供給を市場取引に委ねるのでしょうか?
もちろん自由競争=価格競争という部分もありますが、
一番は電力の安定供給の為ではないでしょうか?
電力は基本的に貯めることができないので
電力が消費されるときに、同じ量を供給(発電)しなければなりません。
お聞きになったことがあるやもしれません、「同時同量」というやつです。
これまでの日本では電力事業者に同時同量を守る義務がありました。
電力の供給は交通や医療、産業や生活に関わるもので、
高いレベルでの安定供給が求められます。
ですのでこれまでは電力事業者が様々な種類の発電を組み合わせ、
もっとも電力が必要とされるピーク時にもブラックアウト=系統破綻による停電を
起こさないよう設備を整えてきました。
電気料金は原価総括方式と呼ばれる、電力会社が損をしない仕組で決めらていましたので、
多少過剰設備であろうと安定供給できるだけの設備投資を行ってきたのです。
そこに既存の枠組みから大きくはみ出すシステムが登場しました。
FITによる再生可能エネルギーの台頭です。
これまでは電力事業者が自分で設置し、自分で100%コントロールできる発電所しかありませんでした。
そこに50kWというような超小型の太陽光発電所や、1基2MWの風力発電所など、
変動電源と呼ばれる出力の安定しない発電所が数多く建設されました。
FIT=固定価格全量買取制度ですので、基本的には発電事業者が発電した電力はすべて買い取られます。
それを野放しにしておくと、天気が良い時、風が強いときは多く発電し、
多くの電力が供給されますが天気が悪い時、風がないときは全く供給されません。
発電量が需要とは全くリンクしていない事になります。
かたや電力市場を見てみると、
電力需要の高まる時間帯は取引価格が上昇しますし、
需要の低い時間帯は価格が下落します。
すると価格の高い時間帯に発電=供給するとより多くの利益が得られますので、
なんとかして需要の多い時間帯に供給しようという動きになります。
また、価格の低い時間帯に発電=供給しても利益になりませんので、
その時間には出力を絞る、電気を蓄える方法を考えるということになります。
市場原理により需要と供給をマッチさせる方向に進むことになります。
これで合理的な価格で安定供給=同時同量が達成できるのではないでしょうか?
日本でも同様の方向に進むことになります。
市場原理による需給調整です。
その際、新たなビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか?
今後も注目していきたいと思います。