現在パネル増設禁止に関してのパブリックコメント(意見募集)が受け付けられています。
(受付期間7月6日~8月4日)
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する
特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等に対する意見募集
主旨はというと
買取価格40円(+税)や36円(+税)の発電所で、
PCS(パワーコンディショナー)を増やすことなく、
パネルだけを増やすと、決定済みの買取価格は変更されることなく、
売電収入が伸びる。
↓
賦課金が増大する。
(制度の抜け道のような、ズルい感じがする。)
ということのようです。
現行のルールでは、
太陽光発電の出力はパネル出力とPCS出力の低い方で決まります。
パネル40kW PCS49.5kW → 認定出力40kW
パネル75kW PCS49.5kW → 認定出力49.5kW
PCSは太陽光パネルで発生した直流電流を交流に変換する装置です。
この装置が交流電流の出口となる為、PCS出力以上の出力は出ません。
PCSが49.5kWの場合、どんなに天気が良くても(日射量が多くても)
49.5kW以上の出力はでないのです。
ではなぜ、PCS出力以上のパネルを設置するのでしょうか?
太陽光発電では朝夕の太陽が低い時間や、
曇りの日など日射量が充分でない場合、パネルは100%出力しません。
すなわちPCS出力以上のパネルを設置することで発電効率をアップすることができるのです。
下図右上のグラフがそれを説明しています。これは資源エネルギー庁が今年1月
改正FIT法施行を前に出した資料なのですが、
そもそもの概念、言葉の使い方、考え方に全く統一感がなく、
何を規制したいのかもはっきりしません。
少し脱線しますが、パネルの増設と過積載はイコールではありません。
過積載をすることで発電量は増え、再エネは増えることに間違いはありません。
また、蓄電池を設置するのは過積載率を高めるためだけでしょうか?
蓄電池を設置することで、発電ピークの緩和に役立てる等考え方で、
北海道電力は出力2MW以上の発電所には蓄電池の設置を必須としています。
再エネを増やすということと、現行制度の抜け穴を使って
より多くの利益を得ようとすることを切り分けなければならないと思います。
資源エネルギー庁が規制したいと思っている事案は
このようなことではないでしょうか?
↓
2013年度にパネル出力50kW、PCS出力49.5kWで認定を取得し、
発電を続けているが、パネル出力を増やすことで、
買取価格36円(+税)のまま、発電量が増えた分が事業者の増収となる。
↑
このような事象が賦課金増大の要因となるのは国民の理解が得られない。
それでは法を改正してパネル増設はできないようにしよう。
そのような考え方のようです。
それでは実際にパネル出力50kWの発電所を75kWまで増設できるのでしょうか?
まず設置場所が必要です。
今まで50kWのパネルを置いていたところに75kWですから、
実際に1.5倍の土地が必要です。
買取価格40円(+税)や36円(+税)の時代は
低圧分割と言われる、1つの土地に複数の発電所を設置することが可能でしたので
利用できる土地は目いっぱい使う、
設置できるところにはできるだけ多くの発電所を設置している場合が多いので、
増設できる発電所の方が少ないのではないでしょうか?
また高圧の発電所だとしても、
利用できる土地を目いっぱい使ってパネル設置をしている場合が多いので、
そこからパネルを増設するのは難しい場合が多いと思われます。
本論に戻ると、まず再生可能エネルギー全量買取制度ですが、
基本的にその年度に設置されたものに対して、
その年度の買取価格が適用されるべきです。
それはその時点での設置費用を鑑みて買取価格を決定しているからです。
ですので、発電開始してからある程度時間が経過した後に増設されるものに対して、
当初の買取価格が適用されるのは間違いだと思います。
しかしながらこのような問題もあるのです。
例えば弊社の標準的な設計で260Wのパネルで599.04kWのパネル出力の発電所があるとします。
現在未稼働ですが、東京電力様との協議が進めば連系できる案件です。
太陽光パネルは出力が上がる傾向にあり、260Wのパネルは将来的に廃番となり、
代わりに300Wクラスのパネルが後継品となる可能性が高いです。
そうなると出力が691.2kWとなり3%以上の増加となり、
買取価格がその時点のものに変更されてしまいます。
ではパネルを減らせばよいのではと思われそうですが、
発電所はパネルの直列接続数とPCSの入力電圧、入力電流
入力系統数を勘案して設計されています。
それを変更するのは無理、無駄がありますし、
土地もあまってしまいます。
不正に近いような事を抑止するために、
健全な発電所開発もゆがめられないない事態になっています。
このような法改正が再生可能エネルギーの普及促進にブレーキをかけることのないよう、
上手く運用されることを願うばかりです。