今回はパネル過積載と発電効率に関して考えてみます。
パネル過積載とはパネル出力をPCS出力より大きくすることをいいます。
例えばパネル出力650kWに対してPCS出力500kWのような場合です。
これはパネルに良い条件の日射があたり、650kWの出力が出たとしても
PCSが500kWまでしか変換できませんので、出力は500kWとなります。
では何故そんなことをするのでしょうか?
太陽光パネルは温度25℃で1,000W/m2の光が
正面からあったとき、最大出力となります。
例えば270ワットのパネルであれば、上記条件で1時間光が当たると
270ワット時の電力を出力するということになります。
現実の太陽光発電所では10度から20度の角度をつけ、
真南に固定して設置しますので、
上記のような良い条件にはなかなかなりません。
簡単に言うと、朝や夕方は弱い光が斜めから当たりますし、
曇りや雨の日は日射が弱くなります。
また、日射の強くなる夏場はパネルの温度が25℃よりも大幅に上がるので、
その熱によって出力減衰がおきます。
ですので270ワットのパネルでも、ちゃんと270ワット出力することは少ないのです。
パネル出力をPCS出力より大きくすれば、
日射条件の悪い時=PCS出力目いっぱい発電していないとき、
出力を上げることができる、すなわち発電効率を上げることができるのです。
そのために過積載になる設計を行います。
では過積載すればするほど発電効率は上がるのか?
答えはNOです。
以前のブログで書いたものが下記です。
太陽光パネルの過積載は利回りを上げるのか?(2017年12月7日発表)
過積載率を上げると絶対値としての発電量は上がりますが、
過ぎた過積載はその分投資金額が増え、利回りとしては低下します。
今回はすぐ横にある鉾田8号発電所と滝浜10号発電所で
発電効率を比較したいと思います。
まずは両方の発電所のスペックと発電量をご覧ください。
鉾田8号発電所は過積載率1.2606、すなわちパネル出力がPCS出力の約1.2606倍です。
滝浜10号発電所は過積載率1.4400、鉾田8号発電よりもより多くのパネルを設置しています。
8月から1月末までの結果を見ると滝浜10号発電所の方が発電効率が良くなっています。
月別に少し詳しくみていきたいのですが、
まず9月は鉾田8号発電所の方が高い効率になっています。
これはどの様な原因でそうなっているかというと、
過積載率の高い滝浜10号発電所でピークカットが発生しているからです。
では12月はどうでしょうか?
12月は滝浜10号発電所の方が高くなっています。
日射の弱い12月は過積載率の高い滝浜10号発電所でもピークカットがほとんどなく、
より効率的に発電できているのでこのような結果になっています。
最新のデータでは2月に後半に入って日射の良い日が続き、
気温も低い状態で推移しているので、また鉾田8号発電所の方が効率が良い状態になっています。
これまで過積載率の違う発電所が隣にあるということがなかったので、
比べることができなかったのですが、
このデータを1年分検証することである程度の結論が得られると考えています。
おそらくですが、純粋に発電効率を見た場合、
過積載率が低い鉾田8号発電所の方が微妙に良くなるのではないかと想像していますが、
かなり微妙なところになるかもしれません。
また、投資効率という観点からみると、
過積載率が上がるというのは、価格の高いPCSの台数が減ることになりますので、
効率が上がる方向に動きます。
いずれにしてもこのデータだけで、
どちらの発電所の方が投資運用効率が良いと判断できるものではありませんが、
発電所を設計する際の基準にはなりそうです。
昨年4月に改正FIT法が施行され、パネル出力の変動にも一定の枠が設けられました。
増加は3%を超えると、現象は20%を超えると、認定を受けたときの買取価格ではなく、
その時点の買取価格に変更されます。
ですので安易にパネルを増やしたり減らしたりできないのですが、
今後も様々なデータをもとにその案件にあった発電所設計を行っていきます。