再エネ固定価格買取制度について考える。(2015年7月29日発表)

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一般的に固定価格買取制度といわれているのは、
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法という法律です。

目的を簡単に表すと国内の再生可能エネルギーを増やすことです。
結論から言うと太陽光ばかりが増えました。

再生可能エネルギーには太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスがあります。
全量買取制度導入前の2012年6月末までの累積導入量は約2,060万kWで
その後導入された発電設備は2015年3月末時点で1875.6万kWとほぼ倍近くなりました。
そのうち太陽光発電は1810.8万kWと96.5%を占めるまでになっています。

ここで考えたいのが制度設計と運用はうまくいった(いっている)のか? ということです。

●太陽光発電への偏重
 これはある程度想定されたことだったのだろうと思います。
 環境に対する影響調査があまり必要なく、各種規制も少ない太陽光発電は
 設置することが一番容易で導入スピードが速くなるのは当然です。
 ここでの問題は、中小水力や地熱など様々な規制があるものに関して
 抜本的な規制改革等の措置が取られていないため、導入が進んでいないということだと思います。

●買取価格決定のシステム
 制度運用当初は経済産業省による設備認定と、電力会社への受給契約申請をした時点で
 買取価格が決定するというものでした。
 これが原因で権利取得だけが目的の申請が殺到しました。
 2015年3月末のデータで、設備認定を受けた発電所の稼働率は20%程度です。
 実に認定を受けた発電所の1/5しか実際に稼働していないのです。

 これにより新たな問題が発生しています。
 電力会社は設備認定を受け、電力受給契約申請が来たものは、
 将来的に発電を開始すると判断します。
 そうなると、送電線・配電線・変電所の容量を上回る電気が発電されることになり、
 設備の増強が必要だと判断します。
 その設備増強費用は連系費用として実際に発電を開始する発電事業者負担となります。
 6月24日のブログにも書きましたが、実際弊社の案件で連系費用が8億円というものもありました。

 現時点で送電線容量が一杯なわけではなく、
 実際に稼働するかどうかもわからない発電所が多くあるにもかかわらず
 将来的にそうなるかもしれないという理由で、現時点で多大なる費用をかけて
 送電線を増強する意味があるのでしょうか?

 ここは制度の運用が良くなかったのではないかと思います。

●現在の買取価格
 現時点では発電開始時に買取価格が決定しますが、
 電力会社による受け入れに時間がかかるため、
 申込から270日経過すると発電が開始できなくても価格確定します。
 現時点では27円/kWも確定せず、来年の買取価格になる公算が大です。
 もちろん来年の買取価格はまだ発表されていません。
 買取価格もわからない案件に関して、事業を行う業者は多くありません。
 その証拠として、経済産業省は新規設備認定申請がかなり減少していると間接的に発表しています。
 (新規設備認定にかかる時間を3ヶ月程度と言っていたものが短くなっています。)

 先日2030年のエネルギーミックスが発表されましたが、
再生可能エネルギーは20%~22%となっていました。
 (環境省は30%程度まで可能といっているにもかかわらずです・・・・)

 政府は洋上風力や大型の地熱発電など、民間単独では難しい大型プロジェクトを進めていますが、
 これは本来想定された全量買取制度による普及の姿とはかけ離れていると感じます。
 現時点で既存大型水力発電を含めても10%強、太陽光発電にブレーキをかけて実現できるのでしょうか?

結論として制度運用がうまく行ってないと感じています。
今後期待したい点として下記を上げたいと思います。

★ 健全な太陽光発電の普及に対する施策。
★ 送配電設備の実際的な増強。
★ 中小水力発電、地熱発電に関する規制緩和。

これが進み、再生可能エネルギーが増え、
原発に依存しない社会が実現されることを期待します。

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