ドイツの底力(2017年6月29日発表)

前回のブログでは電力自由化の定着したドイツにおける電力市場、
特に電力取引に関わる電力の需給調整について少し解説させていただきました。

今回はドイツの住宅事情について述べたいと思います。
それを申し上げる前に抑えておかなければならないポイントがあります。
それはドイツのエネルギ―戦略です。

ドイツにはエネルギー政策の根底をなしている目標と言うものがあります。
それは毎年エネルギー効率を2.1%ずつ向上させていき、
2008年対比で2050年には50%以上のエネルギー供給量を削減すると言うものです。

その目標に向かっての目玉政策と言うものが建物のエネルギー消費に関する削減戦略です。
詳細なデータを用いた説明は省略しますが建物で消費されるエネルギーは莫大な量です。
これを制御していくことによってエネルギー消費量を減らそうと言うのです。

ここで注目すべきは日本で言う省エネとは全然違うものだと言うことです。
日本では夏の冷房温度を28度にしましょうとか、
部屋では厚着をして暖房代を節約しましょうというような声が聞こえてきそうです。
つまり少し我慢して省エネしましょうというようなイメージではないでしょうか。

私は幼少のころ一戸建てに住んでいましたが、夏は上の階に行くほど厚く、
冬は布団から出るのが嫌なくらい温度が低いのです。
それが当たり前ではなかったでしょうか。冬のお風呂場なんて最悪の寒さですよね。
ヒートショックによる健康被害が様々報告されています。
ドイツではこんな住宅は建築基準法違反になるようです。
下の写真をご覧ください。
この集合住宅はフライブルクのヴォーバンという街区にあります。
写真を見た感じでは何の変哲もない単なる小さな集合住宅です。
しかしまずびっくりしたのはここに住んでいる方の光熱費です。
100㎡超の居室で月間の平均光熱費が2000円程度だと言うのです。
ドイツの電気代の単価は日本より高いですがこの金額で収まっている事にびっくりです。
その秘密は下記のようなものでした。

1、日当たりの良い南向きにバルコニーを配置し、
  できるだけ太陽のエネルギーを室内に入れるために南側に大きな窓を設けます。
  これはトリプルガラスです。
  ちなみにこの建物の南側には落葉広葉樹の木が植えられていて、
  夏の暑い時には葉が茂って影をつくり、
  冬は葉を落として太陽光を最大限に吸収するという作りです。

2、建物の外壁の厚さは40cmあり、その中にはぎっしりと断熱材が入っています。
  断熱効果を高めるために北側の窓は小さくして、屋上には太陽光発電施設があります。

3、次に室内の空気の排気と吸気ですがこれが素晴らしい。
  冬の室内の汚れた暖かい空気を外に出す時はその熱を熱交換器で回収し、
  その熱を利用して外から取り入れるきれいな冷たい空気を暖めるという具合です。

4、又発電と熱を生成するためにガスコジェネレーションシステムを採用しています。
  この建物は500ccのバイクのエンジンを使って発電と熱の供給をします。
私たちはこの集合住宅に住んでおられる方の住宅に入らせてもらったのですが、
居室は広く快適な居心地で南側の大きな窓からはグリーンの落葉広葉樹を見ることができ素晴らしい住宅でした。

しかも室内温度は1年中18℃~22℃に保たれているとのことです。
日本では考えられないような贅沢な作りになっています。
断っておきますが贅沢というのは暮らす環境が贅沢と言う事であって、
決してお金をかけているという意味ではありません。
こんな住宅がドイツではごく一般的な人が購入できる価格帯だそうです。

このような家をパッシブハウスと言いますがドイツではこのような住宅を義務化することによって
エネルギー消費を抑えようと懸命になっているのです。
義務化するからにはそれなりの仕様にするための補助金も出しているようですが、
それによって建設会社や工務店は潤い、それによる税収で補助金分をしっかりと取戻しているというお話です。

気候や経済条件が違うので日本も同じようにやればいいというものでもなさそうですが
ドイツに見習うべきものはたくさんあると思いました。

このような建物をつくると言うことは非常に共感すべきものですが、
実は本当に感心したのはドイツの政権が代わろうが、
難民が入ってこようが省エネに対する一貫した政策を地道に貫く姿勢、
そこに非常に関心をしました。
ドイツの底力を見たような気がします。

ちなみにドイツに入国した難民が収容されている建物も見ましたが、
そこもパッシブとまではいかないまでも
日本の一般的な住宅よりも大きな断熱が施されているそうです。

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