1カ月の間があいてしまいました。なんだかんだと忙しく対応に追われる毎日でゆっくりとブログを書く時間が取れませんでした。
今回は、ご存じの方もたくさんおられると思うのですが、経済産業省から発表がなされた10月15日のFIT法運用方針の変更について述べてみたいと思います。
FIT法が施行された初年度の買取単価は40円/KWh、その後年ごとに36円、32円、29円、27円と減額されていき、今年度は18円と言う買取単価になっています。
このうち当初3年間の40円、36円、32円の買取単価は国が再エネのスタートダッシュを目論んでプレミアム価格をつけたと言われていました。
確かに業界では予想以上の価格がついたということで所謂太陽光バブルと言う言葉が新聞紙上を駆け巡ったくらいでした。
今回の方針転換の対象はこのプレミアム価格についてであります。
プレミアム価格案件は2012年~2014年の間に設備認定を取得したもので、2018年3月時点で稼働した案件は半分にも満たないという結果が出ています。つまり当初高い価格で設備認定を受けたにも関わらず何らかの理由でプロジェクトを開始していないと言う状態が続いてきたということなのです。
この状態を解消しようと言うことで経産省はプレミアム価格帯の案件については来年の3月までに着工しなければ買取単価を減額すると言う強行姿勢を打ち出したのです。
この背景には下記のような理由があります。
1) FITの賦課金、つまり国民負担は2018年度で総額2.4兆円、2030年度の予想は4兆円に達すると言う試算が出ている。→国民負担の抑制(諸外国に比べても高い)
2) FITの買取価格はその年度の発電所建設、運用に必要な経費単価を前提として考えられているものであり、発電所建設単価下落後に事業者が過剰な利益を得ることを目的としていない。
3) 稼働しない案件のために系統容量が抑えられていて、新規案件が開発できなくなり、結果的に更なる再エネの普及が妨げられている。
まず1) についてでありますが、確かに国民負担が再エネの開発のために使われるとは言え大きな負担である事は間違いないと思われます。
電気代が1万円/月であれば約1000円弱が賦課金として徴収される状況です。
そして今後これは確実に増えていくということです。
再エネに投資している方であれば、そのお金を戻すすべがありますが、そうでない方は迷惑千万と言ったところでしょうか。
次に2) についてですが経産省が当初想定していた以上の利益を事業者が獲得すると言う事を事業者自身が意図して建設開始を遅らせているということであればそれは事業者側がずるいということになってこれもごもっともだと言うことになります。
3) について電力会社は送電線の容量を申請順に抑えていきますので当初のプレミアム価格帯の発電所のために抑えた容量が存在するのでその後に申請をしてすぐにでも発電所建設をしたいと言う事業者の妨げをしているということになればこれは排除すべきだと思います。
しかし1) 2) 3) の経産省の理由については一見正しいようにも思えますが、問題はそれがすべてではないと言うことです。
少し見方を変えれば、国民負担の想定は国側も当初から計算に入れた上でこの制度に着手したのではないのでしょうか。
又当初のプレミアム価格を維持したまま建設ができていないという理由の中には大規模案件で環境アセスに準ずるような調査をしていると言う事業者や電力会社側の変電所や上位系統の工事が済んでいないので着工ができないと言うことだったり、土地の買収、造成に時間を要していたりと様々な物理的要因が現場レベルでは存在しています。
プレミアム案件のために系統容量が抑えられているということばかりではなく、電力会社側の事情で工事をしたいけどできないと言う案件はざらに存在するのです。
そもそもの制度のあり方としていつまでも権利を維持する事ができるような制度でスタートしてしまった事自体が問題なのではないかと思ってしまいます。
事業者の中にはこの方針転換で開発中の案件が頓挫してしまうと言う話を最近色々なところで聞くようになってきました。
銀行から融資を受けて既に造成工事を始めているところは来年の3月末までに要件を満たせないところも出てくるでしょう。
海外からの投資も多く行われており、法律をあと出しじゃんけんで変えられるようなことになれば国際的な信用も落ちていくのではと危惧します。
今回のFIT法の運用方針の転換は太陽光業界にまさに激震をもたらしています。
現在パフリックコメントの収集中であり最終的にどのような結果になるのかはわかりませんが、再エネ業界がこれからも活力を持った方向に行く事を望んでいる今日この頃であります。
今日はこんなところで終わりたいと思います。