2010年に始まった英国の固定価格買取制度(FIT)が、先月末の2019年3月31日までに新規の受け付けを終了したとみられます。
英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2018年7月にその政策方針を発表し、同年9月までパブコメを受け付けていました。公式の統計によると2017年の英国の総発電量は約336TWhで、そのうち29.3%が再生可能エネルギーにより発電されました。2016年の24.5%から大きく増加したことになります。
(出典:英BEIS/BBC、日本語仮訳を追記)
これは再生可能エネルギーの生産能力が増加したことによるものと指摘されています。2017年に風力と太陽光の発電量は47.7TWhから61.5TWhに増加し、風力発電容量が22.6%増加したことが大きく影響したとみられます。
(出典:英BEIS/BBC、日本語仮訳を追記)
英国では2002年から、再生可能エネルギーにより発電された電気を電力事業者が一定程度購入することを義務付ける「再生可能エネルギー使用義務制度(RO)」が導入されました。その8年後の2010年から「固定価格買取制度(FIT)」が始まり、2015年からは「差金決済契約制度(CfD)」という仕組みが導入されています。FITがあらかじめ政府により電源種別毎の買い取り価格が長期間固定で設定されるのに対して、CfDは発電事業者と電力の買い手となる政府系企業との間で長期間の固定価格(ストライク・プライス)を契約により設定する制度です。5MW 以上の再生可能エネルギー発電設備が対象で、今後も継続するとみられます。
FITの導入により、再生可能エネルギー発電設備容量は2010年末の9.3GWから38.9GWに急増する一方で、2012時点でFITにより75万の申請が集まるとしていた予想は大幅に上回り、2017年末時点で80万に到達しました。それに伴い、FITを支えるための消費者への電気料金転嫁は当初年間4.4億ポンド(約640億円)と予想していたものが、2020年には16億ポンド(約2,300億円)にまで到達すると見込まれたそうです。
そのため英国政府は、これ以上の電気料金負担を抑制するため2017年度から予算に上限を適用していくことを表明しました。再生可能エネルギー発電コストが低下する中、FITなしでも事業が成り立つケースが出てきていることもあり、今年3月31日をもってFITの新規受付を終了するに至ったものとみられます。(参照:https://sustainablejapan.jp/2018/07/21/uk-fit-cfd/33408)
ちなみにドイツなどでは、FITの実質的な後継としてフィード・イン・プレミアム(FIP)という仕組みが運用されており、同国では2018年の再エネによる発電量の割合が40%を超えたとされています。
日本でもいわゆる 「ポストFIT」に関する議論がされはじめていますが、未だ明確な道筋は見えてきません。2030年に22~24%という再エネ導入目標を掲げていますが、2016年度時点で14.5%(水力を除くと6.9%)にとどまります。(出典:経産省資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2017.pdf)
これからの日本の再エネ普及促進策はどのような形になるのでしょうか。
国の諮問委員会でもドイツなどのFIPや、今回ご紹介した英国のCfDも先進事例として度々紹介され有力視されているようですが、はたして・・・