少しブログを書くインターバルが長くなってしまいました。本日のテーマはFIP(フィードインプレミアム制度)についてです。
ドイツのFIP(マーケット・プレミアム・モデル)概念図 [出典:株式会社ZECPOWER]
過去のブログでは既に概要をお伝えしましたが、再生可能エネルギーを主力電源にしていこうという日本国政府の方針が決まった以上、このFIPへの移行は大変重要な意味を持ちます。再エネが主力電源になれるかどうかはこのFIP制度への移行が成功するかどうかにかかっていると言っても過言ではないと思うのです。
それだけ重要な制度変更なのです。従いまして再度このテーマを取り上げたいと思います。
今回は発電所を運営するという観点からこのFIPを考えてみたいと思います。
発電事業というのは社会インフラである電力をつくってそれを流通させるという公的な枠組みがあり、電力という特性上、作ったものはすぐに消費しなければならないという定めを負っています。
従いまして発電所側は明日の24時間の30分単位でどれだけの電力を発電するかという計画値を広域機関に提出しなければなりません。
その計画値と実際の発電量との間に誤差が出れば、その分を金銭保証しなければなりません。(インバランス清算)
これは例外なくすべての発電所に共通しているルールなのです。
石炭、石油、LNGを燃料とする火力発電所、原子力発電所、水力発電所や太陽光発電所、風力発電所のような再エネ発電所も共通している原則です。
いやいや待てよと、「自宅の屋根に太陽光がついているが、明日どれだけ発電するかなんて計画はどこにも出していないぞ」と思われた方もいらっしゃったかもしれません。
そうなんです、その報告義務を課されていないのがFIT制度を利用している再エネ発電所という事です。
FIT制度は皆様ご存知のように発電した電力すべてを事前に何の報告もなく電力会社に買い取ってもらっていますよね。
ついでに電力の売却先も電力会社に決まっていて、自分で買い手を見つける手間もいらないのです。
考えてみてください。何かの商売(パン屋さん)をしようとした時に20年間絶え間なく決まった価格で作ったものはすべて買い上げてくれる事ってこの資本主義社会ではあり得ないですよね。
このようにFITは発電設備をつくりさえすれば、20年間、事前の発電計画の提出もせずインバランスペナルティーも支払うことなく、発電したものすべてを電力会社が買い取ってくれるというまさに手取り足取りの幼稚園、小学校レベルの過保護な制度なのです。
この恵まれすぎたFIT制度のお陰で再エネ発電の普及が急速に広まり、一定の成果を収めました。これは周知の事実でありますが、このまま過保護な制度を続けていくことは無理なのです。
再エネを主力電源として更に普及させていくためにはこれまでの国民のお金で育てていくというフェーズから、今後は大人になるための準備をするフェーズ、つまり自分の力で生きていくという言うフェーズに入っていく事が必須です。
高校、大学生程度の制度にはしていく必要があるというわけです。それが2022年4月から予定されているFIP制度なのです。
FIP制度下では買い手を自分で見つけてきて、明日の30分毎の発電量を広域機関に報告し、インバランスが生じればペナルティーも支払います。
つまり他の火力、原子力発電所と同じ立ち位置で発電所運営をしなければなりません。
これが今回FITからFIPへの移行を促す目的なのです。FITという安住の地に慣れきってしまった我々もこれからは発電所運用の様々なリスクと対峙していかなければならないのです。
これが原発や化石燃料に依存しない国産のエネルギーである再生可能エネルギーを電力市場に統合していくための通過点であると私は思います。
ゼックにおいては2年後のFIP制度に向けた準備の一環として既にホームページでご覧いただいているとは思いますがドイツに所在するある会社と株式会社ZECPOWER(ゼックパワー)という合弁会社を今年の初めに設立いたしました。
この会社に関しては今後追々情報をお伝えしてまいりたいと思います。
本日はFITからFIP制度に移行する意味について簡単に述べさせていただきました。