脱炭素社会への歩みと再エネ

コロナ禍のさなかに就任した菅義偉内閣総理大臣は昨年10月の所信表明演説で、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、国内外に大きな反響を呼びました。環境規制とクリーンエネルギーへの投資に積極的なバイデン氏の米新大統領就任が有力視され、米欧中など主要国や地域が脱炭素への動きを強めていたことも背景にあったものと思います。今年5月26日には改正地球温暖化対策推進法が成立し、「2050年までの脱炭素社会の実現」の方針は法文にも明記されました。同法にはまた、自治体による促進区域の設定など再エネの導入拡大策も盛り込まれました。

脱炭素社会へと向かう動きは、もはや不可逆的なことなのでしょうか、再エネはどこへ向かっていくのでしょうか。

これまでも様々な環境保護やCO2排出削減に向けた取り組みは行われてきたのですが、これを契機に社会全体で脱炭素社会実現へのコンセンサス形成が進み、様々な事柄が大きく前進した感があります。化石燃料に依存しない産業構造の構築も進み、政府も企業も一斉に動き出しました。

ではなぜ再エネの導入を推し進める必要があるのでしょうか。確かに地球温暖化対策や環境保護という面もありますが、脱炭素化はすでに世界的な潮流となっており、企業の中には再エネへの切り替えができなければサプライチェーンから除外されるかもしれず、むしろリスク要因と捉えられているところもあります。

今年3月、自然エネルギー財団は、再エネの大量導入と水素の生産や輸入を組み合わせれば、日本は2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにできるという分析結果を公表しました。日本のエネルギー需要は省エネの進行や人口減少により50年には20年比で54%減少すると予測し、再エネは価格低下が進んで50年には太陽光が総電力供給量の48%、風力発電が36%をカバーするとしています。現在、政府は2030年時点での再エネ導入目標を22~24%に定めていますが、これでは不十分として大手企業90社以上が目標を40~50%まで引き上げることを求める、といった動きもあります。

次に、再エネ導入拡大に向け政府で議論されている規制緩和の方向性について少しご紹介します。目標達成のために焦点となるのは、主に3つの壁であると指摘されています。

第1に「荒廃農地」の規制です。農業従事者の高齢化で増える荒廃農地の中でも、再び農地として使用することが難しい土地が全国で約19万haもあるとされます。荒廃農地であっても農地を別の目的で使うには複雑な手続きが必要で、原則として他の用途に使えません。その規制を緩和し、太陽光発電のために使う案などが検討されています。

第2に「環境アセスメント」です。風力発電を導入する際は、事前に環境への影響について調査するための環境アセスメントを行わなければなりません。欧米の一部諸国では5万kWの規模から調査の対象となりますが、日本では1万kW以上が対象です。当然審査の数は多くなり、結果が出るまで4~5年かかります。5年後の事業計画に向けて投資することは企業にはハードルが高く、導入の妨げとなっています。政府は対象を5万kWまで引き上げることを検討しています。

第3は、地方で発電した電力を消費地に送る「送電網」です。日本では近年まで、各地域で1つの大手電力会社が発電し、電気を消費地に送電するという仕組みでした。昨年、ようやく各大手電力会社から送電部門を分離する制度になりましたが、送電網の使用は先に契約を申し込んだ火力や原子力が優先されており、新規参入が多い再エネが使える容量が少ないと指摘されています。再エネの主力電源化以外にも電力の災害レジリエンス強化という方針も出されており、送電網の整備促進が検討されています。

最後に、これまで様々な課題を残しながらも再エネの普及拡大とコストダウンを目的に続いてきたFIT制度は、昨年の法改正に伴い抜本的な見直しが行われ、来年度からはFIP(フィード・イン・プレミアム)という新たな制度が始まります。

ゼックは、新たな制度下でも引き続き再エネの開発を進め、その普及と利用拡大に努めてまいります。

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