東京都が新築住宅を太陽光発電義務化する意義と課題

昨年9月頃から東京都は新築住宅へ太陽光発電設備の設置を義務化する検討を始め、今月11日に都の有識者検討会は、一戸建て住宅を含む新築の建物に太陽光発電のパネル設置を義務付けるよう提言する答申案をまとめました。関係条例の改正案をまとめて2022年度中の成立を目指すとしています。その意義と課題について簡単に整理したいと思います。

東京都で一戸建てを含む住宅への太陽光パネルやZEV充電設備の設置を義務付ける条例が成立すれば全国初となります。住宅への設置義務づけは政府などでも議論されましたが、住宅価格高騰などへの懸念から見送られた経緯があります。小池都知事は昨年9月の都定例会議で「CO2の削減が一番進んでいないのが家庭だ。家庭部門の再生エネルギー導入を進めるということで提案した。」とその意義を説明しました。東京都は温室効果ガスの排出量を2030年に2000年比で5割削減するという独自の厳しい目標を掲げています。しかし2019年時点で削減幅は0.2%減にとどまります。その原因の一つが家庭からのCO2排出量の増加であり、2019年の排出量は2000年より300万トン以上増えたそうです。

一方で懸念材料にはまず、太陽光パネルの設置費などが上乗せされると住宅価格の値上がりにつながる恐れがあります。群馬県や京都府の同種条例では一戸建てを対象外としました。行政にはサポートする体制や措置が必要であり、初期費用に加えて維持費を含む補助が不可欠とみられます。

そうすると気になるのが補助金の予算措置です。東京都は2022年度、省エネや温暖化対策の予算を大幅に増やしました。新築住宅への省エネ・断熱性能の整備や太陽光パネルの設置を進めるため108億円を計上し、最高で一般家庭の太陽光パネル設置費の1/3相当の36万円(3kW分)を補助し、災害対策名目でも太陽光パネル設置を促すとしています。この補助対象は年間約13,000件分ですが、義務化されるとその対象は約23,000件となり、もし現行の補助金額を適用するならば約36億円が追加で必要になります。

都の有識者検討会座長の田辺早大教授は、制度普及のため、最初は補助金で購入者の負担を減らす必要はあるが、税金が使われるのだから、出し続けるのは適切ではないと指摘しています。ほかに太陽光パネル設置には建物購入者が設置代を負担する以外にも発電事業者に屋根を貸して設置費用を事業者側が負担する、いわゆる屋根貸しという方法もある、と補助に頼らない方法も提案しています。

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