すでに売電の権利を取得しているもの(稼働済みを含む)の
パネル増設が事実上禁止されました。
今年7月から8月にかけてパブリックコメントが募集され、
8月31日に公布されたものですが、
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する
特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等」
というものです。
資源エネルギー庁が発表している資料にあるように、
すでに稼働している40円案件や36円案件で、パネルの増設を行うと
実質的に売電量(売上)が上がる。
その設備を増設する費用(単価)は当時想定された設備調達価格よりも低いので、
費用対効果が高くなる=ずるいのではないか? ということのようです。
40円案件と言うと2012年7月1日~2013年3月31日に売電権利を取得したものですので
約5年前ということになります。
確かに現断面での設備調達価格は5年前より安くなっています。
しかしながら、すでに稼働している発電所にパネルを増設し、
(そもそも増設できるようなスペースがあればですが・・・・・)
直流結線を外して増やしたパネルを再結線する。
それが今通常の工事を行っている単価でできるとは思いません。
また、系統容量問題や地権者様の事情等で、
稼働できていなかった発電所を発電開始にこぎつけたとき、
予定していた270ワットのパネルが廃番で、
後継品が300ワットになっていた場合、
これも増設と認定されるため、パネル枚数を減らす必要があります。
再エネを増やそうというところからは逆行するものですね?
→以前のブログ パネル増設禁止に関して。(2017年7月19日発表)
さて、今回は少し視点を変えて、
認定出力(PCS出力)は一定で、パネル出力を増やした場合、
すなわち過積載をした場合、本当に利回りが上がるのかを検証します。
低圧1基ですので、PCS出力は49.5kWとなります。
これは今年11月6日の発電グラフです。
赤い線48kWは鹿島灘2号の第2区画、
青い線60.48kWは鹿島灘5号の第7区画、
2号を設計しているときは過積載の概念がなく、
5号設計時には120%くらいが一般的でした。
緑の線は鹿島灘5号のパネルを73.56kWまで増やすとどうなるか
検証するために実データに比例してシミュレートしたものです。
この出力にすると11時にちょうど49.5kWとなり
一番効率のよい状態となります。
では年間を通して効率が良くなるのかということですが、
発電量の高い春のデータで見てみると
ピークカットという現象が起きてしまいます。
パネルを多くすることで、発電量がPCS出力を超えてしまいます。
(緑の山になっている部分。)
そうなる実際は紫の線のようにそこを限度として横ばいになり
緑の山(紫の線より上の部分)は交流に変換されず
売電することができません。=ピークカット
黄色で網掛した部分がPCS出力である49.5kWを超えている部分で、
実際の売電量は49.5kWhとなり、ピークカットが発生します。
ここで疑問となるのは、
「過積載をすることで利回りが上がるのか?」
です。
確かに過積載をすることで発電量はアップします。
これは朝夕や曇りなど充分に日照が得られない時間でも、
パネル出力が多い分発電量がアップするからです。
考えないといけないのはパネルを増やす分
設備取得費も上がるということです。
太陽光発電所の設備は概ね下記の方法で計算されます。
キロワット単価 X パネル出力
ですので過積載をするためにパネルを増やせば
取得費が上がります。
ですので単純に発電量が上がるからと言って利回りは上がらないのです。
ちなみに工事単価を同一としてシミュレーションをしてみました。
PCS出力49.5kWに対して、パネル出力65kWを超えるあたりから利回りが低下します。
過積載率にすると1.313倍です。
すなわちピークカットが無視できない量(発電量の1%以上)になると
利回りは低下していくのです。
ある程度土地に余裕がある場合、
70kW~75kW、過積載率にして1.414~1.515くらいまでパネルを増やすことは
大幅な利回り低下を招かず、トータル発電量のアップを見込めますが、
85kWを超えて過積載することは利回りの低下を招くことになります。
これが株式会社ゼックの開発する発電所の過積載率が1.3程度に抑えている理由です。