原子力、石炭、水力、地熱のベースロード電源を60%以上確保しなければならない。
と経済産業省は主張し始めました。
これははたして何を意味するのでしょうか。
現在はベースロード電源比率が約40%です。
つまり最低限60%は必要だということによって
原子力発電の比率を高める余地を増やしているということではないのか。
水力、地熱についてはある程度のポテンシャルはあるが、開発するのに様々な規制があり、
一挙に増やそうとしても難しい電源なのである。
もう一つの石炭は二酸化炭素を多く輩出するとして温暖化対策の観点からは増やしにくい。
つまり経産省としては「残った原子力発電をもっと増やしていかないと
安定した電源供給ができないんじゃないんですか」、という議論に持ち込みたい
という思惑が透けて見えるのは私だけでしょうか。
逆にいえばベースロード電源に含まれていない代表選手の再生可能エネルギー
(特に太陽光、風力)は残る40%の一部で固定されてしまうようなことになり、
成長余地が制限されてしまうことにつながる危険性があります。
経産省が60%にしなければならない理由としてあげているのは、
欧米の現在のベースロード電源比率が60%だからということのようです。
冒頭にまやかしと申し上げたのはここからであります。
これは自然エネルギー財団常務理事の大野様の雑誌記事を引用しますが、
確かに現在のベースロード電源は経産省の示すように60%程度を維持しておりますが、
2030年の段階の見通しとしてはともに50%くらい(IEAの見通し)まで
下がってくると言われております。
つまり下落傾向であるということです。
であれば2030年のエネルギーミックスの指標となるベース電源の確保については
同じ2030年で比較すべきではないのか、
少なくとも下落傾向であるということを言わずに、
現在の欧米比率に合わせる形で60%を確保しなければならないという、
経産省の独自性のない考え方では日本としてのエネルギー戦略に対する
根本思想がどこからも見えない。
原子力発電の再稼働、再エネの拡大、温暖化問題等いろいろな問題が山積みですが、
日本としてどのような考え方に基づいていかなるエネルギー戦略を打ち出していくのか、島国でエネルギーを他国に依存することのできないわが国であればこそ、
今、本当に重要な決断をしなければならない時期なのではないでしょうか。