FITの固定価格買取期間は発電開始から20年です。
「20年後はどうなるのですか?」
説明会での質問ベスト3に入ります。
いつもお答えするのが、
「基本的には設備を撤去します。
撤去費用はファンド設計に見込んでいます。」
なのですが、実はそんなに単純なものではありません。
説明会でも様々なオプションをご説明するのですが、
今回はそのあたりを書いてみたいと思います。
まず機器寿命ですが、一般的に期待寿命として太陽光パネルは20年~30年といわれています。
実際メーカーの出力保証が25年間ありますので、
30年といわず、それ以上もつのではないでしょうか?
太陽光発電所の重要な構成機器としてパワーコンディショナー(PCS)があります。
PCSは太陽光パネルで発生した直流電流を交流電流に変換する装置で、
太陽光パネルとは違い、稼働部分がありますので、一般的な寿命は10年、
期待寿命で10年から15年といわれています。
以前PCSメーカーであるOMRONに質問したところ、
平均14年といわれました。
株式会社ゼックではファンド設計の際、
10年保証しかないOMRON社製に関しては10年目にすべて交換できるだけの積み立てをします。
SMA社製PCSは元々5年保証ですが、オプションで20年保証がつけられますので、
5年目までに延長保証料を積み立てる設計になっています。
あとは20年間どの様なメンテナンスを行っていくかで大きな違いが出ると思われます。
弊社発電所は遠隔監視装置でのチェックや、日頃の点検、
年次点検での全パネルチェックなど、かなりきめ細かくメンテナンスを行い、
20年後も健全な状態に保っていきます。
そこで、弊社が地権者様と土地の賃貸借契約をする場合、
双方が合意をすれば延長できると定めています。
では20年後の様々なオプションを見てみましょう。
・買取制度があり、発電を継続。
20年後に再生可能エネルギーを買い取る制度があるかどうかは分かりませんが、
仮に5円~8円で買いとってくれるとすれば、かなり分配が少なくはなりますが、
ファンドとして発電事業を継続する可能性があります。
修理費など設備の維持費や合同会社の決算費用などファンド維持費を考えると、
あまりリターンが見込めない事は明白ですが、
マイナスにならないのであれば、再エネを減らさないという観点から継続する意義はあります。
・自家消費をする。
FITが日本より10年早く始まったドイツでは、既に買取価格が10円程度まで下がっています。
そこで、最初から自家消費を目的に太陽光発電設備を設置するところが増えています。
太陽光発電による出力は晴れている昼間は多く発電しますが、曇りや雨の日
朝や夕方は出力が低いなど1日の中でも大きく変動します。
そこで自家消費モデルは需要の低いところに出力を合わせるなどしています。
20年後、電力を多く必要とする事業所が電力会社から買う電気代が1仮に16円/kWhだとすると、
発電したものを電力会社の系統に流すのではなく、
直接その事業所に12円~15円/kWhで販売する、すなわち自家消費するという方法も考えられます。
・地域で自家消費する。
これが一番よい方法だと思うのですが、現在の制度ではできません。
電気を供給するには新電力=特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)
現在では、小売電気事業者の登録があれば、
一般家庭や商店などの50kw未満の契約でも契約できるようになっています。
しかしそこには30分同時同量というルールがあります。
30分毎の需要量と供給量の差を3%以内に抑えないと、ペナルティがあるというもので、
とても小規模な太陽光発電所で地域に電力供給するなどということはできません。
しかしながら、現実に何が起きているかというと、
太陽光発電所で発電された電力は、東京電力の系統に送り込まれ、
その地域の需要を超えない限り地域で消費されているのです。
地域で発電されたものは地域で消費するという仕組み作りが進めば可能となるのではないでしょうか?
FIT法は再生可能エネルギーを急速に増やし、導入コストを下げるで発電コストを下げることを目的としています。
ドイツでは既に電力を系統から買うよりも、太陽光発電で生み出す方が安くなっており、
比較的多くの電力を安定して使う事業所(冷蔵・冷凍倉庫等)が完全に自家消費を目的として
太陽光発電設備を設置している事例が多くあります。
日本もそういった状況になり、今後自家消費~地域消費を目的とした太陽光発電設備の設置が進むと思われますが、
それにプラスして、20年後もしっかりと管理、維持されている発電所はできるだけ存続させ、
地域でその電力を消費していく方法を考える必要があるのではないでしょうか?